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症例集

症例集詳細

胃腸管好酸球性硬化性線維過形成(GESF)の猫

2018.12.09
症例はアメリカンショートヘア、13歳齢、去勢雄。朝から2回の痙攣発作があったとのことで来院。
身体検査では腹部触診にて硬結感のある球形の腫瘤が触知された。
血液検査ではヘマトクリットの低下(21.8%)、好塩基球数の増加(840/µL)を認めた。血液生化学検査ではALBの低下(2.2g/dl)、NH3の上昇(189µg/dl)、CPKの上昇(339U/L)を認めた。
腹部X線検査では円形の腫瘤陰影と消化管の変位を認めた。
腹部超音波検査では直径3.5㎝の低エコー性腫瘤が認められた。周囲の小腸には著変は認められなかった。エコーガイド下で細胞診を実施したが、穿刺した感触は非常に硬く、炎症細胞がわずかに得られるだけであった。
 
腹腔内腫瘤の精査のために初診から2日後に試験開腹を実施。
腹腔内のマスは腫大した腸間膜リンパ節であった。


腫大したリンパ節周辺の小腸壁には瀰漫性の紅斑を認めた。


マスの完全切除は困難であったため、一部をトレパンにて採材し病理組織検査に供した。



病理組織診断:好酸球性硬化性線維過形成


第10病日に抜糸を完了し、第16病日よりプレドニゾロン(1mg/kg SID PO)、エンロフロキサシン(5mg/kg SID PO)の投与を開始した。
第36病日、腫瘤の直径は3.0㎝とほとんど変化がなかった。プレドニゾロンの効果が不十分と思われたため、酢酸メチルプレドニゾロン(10mg/head SC)とセフォベシンナトリウム(8mg/㎏ SC)の投与を実施した。  
第48病日、腫瘤の直径は3.2㎝とほとんど変化がなく、酢酸メチルプレドニゾロンとプレドニゾロンの差が感じられなかったため、プレドニゾロン(0.5mg/kg SID PO)、エンロフロキサシン(5mg/kg SID PO)の投与に変更した。  
第66病日、腫瘤直径3.1㎝で変化なし。エンロフロキサシンは休薬し、プレドニゾロンは(0.5mg/kg EOD PO)漸減した。  
第99病日、腫瘤直径2.9㎝で変化なし。嘔吐や体重減少といった臨床症状も認められなかったため、プレドニゾロンも休薬とした。  
第283病日、食欲はあるが毎日嘔吐しているとのことで来院。腫瘤直径は2.6㎝。プレドニゾロン(0.35mg/kg EOD PO)の投与を再開した。  
第339病日、嘔吐が落ち着いているためプレドニゾロン(0.35mg/kg 4日に1回 PO)を漸減した。  
初診から422日経過した現在もプレドニゾロン(0.35mg/kg 4日に1回 PO)の投与を継続しながら経過観察中である。(腫瘤直径は4.3㎝とやや拡大傾向)

GESFは2009年にCraigらによって提唱された病理組織診断名であり、組織学的に好酸球性炎症、反応性線維芽細胞、高密度のコラーゲン柱帯によって特徴づけられる非腫瘍性病変である。病変は主に消化管と周辺リンパ節に限局し、幽門括約筋や回盲結腸結合部に好発するとされている。
Craigらの報告によると病変の56%から細菌巣が検出されており、また別の報告では内部の細菌のほとんどがブドウ球菌抗原陽性で、一部ではMRSA関連抗原が証明されている。このため病変形成の機序として細菌による抗原刺激の関与も疑われている。
治療としては外科切除あるいは生検とプレドニゾロンの併用群が、外科単独あるいは外科切除と抗菌薬の併用群と比較して生存期間が有意に長かったことが報告されている。また生検と酢酸メチルプレドニゾロンの併用で良好に経過した猫の報告も存在する。これらの報告に基づくと現状ではステロイドがGESFに対して最も有効な薬剤であると考えられる。しかしながらプレドニゾロン投与の有無によって生存期間に有意差が認められなかったとの別の報告も存在するため、未だに適切な治療に関しての結論が出ていない疾患といえる。
実際に本症例の病変は外科切除が困難であったが、病変の生検とステロイド、抗菌薬の投与を実施し長期に渡って管理できている。一度ステロイドの休薬を試みたものの、嘔吐の再発をきっかけにステロイドを再開したところ症状が良化したことから、やはりステロイド投与は臨床症状の管理において効果が期待できるものと思われた。
しかし一度増殖した線維組織をステロイド投与のみによって縮小させることは難しく、腫瘤の減容積のためには外科的介入が必要となると思われる。  
また本症例の病理組織検査では明らかな細菌巣は認められなかったが、病変の全てを切除した生検材料ではないためその存在は否定できない。ステロイド投与によって感染の悪化リスクがあることを考えると、現状では組織検査で細菌に関するコメントがなくても抗菌薬を併用しておくのが無難であるように思われた。
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